こうした絵本は、18世紀後半にイギリスで出版された絵本に始まりますが、当時はまだ挿絵にかぶせたフタをめくり、景色や場面の変化を楽しむフラップ型の単純なしくみでした。19世紀後半に入るとドイツではのぞきからくり(ピープショー)や一つのタブの引っぱりで複数のしかけが動くプルタブ型で知られるロタール・メッゲンドルファー、イギリスでは円盤型のしかけで有名なアーネスト・ニスターが登場し、しかけの幅が広がります。1930年代には、アメリカでキャラクターやおとぎ話を使ったポップアップ型絵本が大ヒット、その影響はヨーロッパにも及び、1950〜70年代のチェコではヴォイチェフ・クバシュタが盛んにポップアップ型絵本を制作し、外貨獲得のため様々な言語に訳され輸出されます。現代では、アメリカの巨匠ロバート・サブタやマシュー・ラインハートなどペーパー・エンジニアと呼ばれる新しい作家たちが、これまでのしかけの構造をより進化させ、複雑かつ高度な技巧を凝らした絵本を生み出すなど、しかけ絵本の世界は新たな展開を見せています。
本展では近年特に注目されている現代のポップアップ型絵本を中心に、めくるタイプのフラップ型、360度の展開が見事なドールハウス型なども合わせて約200点を超える作品を展示します。また、ポップアップ型絵本のペーパー・エンジニアとして現在活躍するさくらいひろし氏の作品コーナーも特別に設け展示、この他にも見るだけでなく実際に体験できる作品も交え国内外のこうした絵本の数々を紹介します。美しいイラストと緻密に計算された技から生まれるとび出す絵本の世界をお楽しみください。
add: 2021-07-23 / mod: 2021-07-23