私たちはつぶやきます。
作者の顔を知りたくなるのです。
顔を知ったからといって何になるのでしょう?
でも顔が見たくなる。人間の煩悩かもしれません。
それにこたえてか、作者の肖像写真がさまざまに流通しています。本に、雑誌に、新聞に……作者の写真があちこちに載っています。恐らく19世紀の終りごろから、文学作品は(多くの場合)作者の写真とともに享受されていたようなのです。近代の文学史は写真とともにあったとさえ言えるでしょう。
かねて日本近代文学館では本や雑誌の中に眠る文学者の写真を発掘・整理してきました。
文学者から紙焼きやネガでご寄贈いただいた貴重な写真についても調査・研究を進めています。
今回そういった写真を(所蔵するうちのごく一部ですけれど)一挙にごらんいただくことにしました。
「こ、こんな写真があるなんて!」
「あの人に、こんな表情があったとは!」
といった驚きを共有してくださいますか。
本や雑誌に載った写真を、それが載ったもとの状態のまま眺めると、何か発見がありませんか。
川端康成記念室は「生誕100年記念 林忠彦写真文学展 文士の時代―貌かおとことば」です。それ以前の時代の写真の撮り方と、何とまあ違っていることでしょう!
最後までとくとごらんくださいますように……。
(編集委員 武藤康史)
add: 2019-01-19 / mod: 2019-01-19